３周年企画４

□一人っきりの夜
千歳 甘め

□一人っきりの夜


ぐずぐずと鼻を鳴らしながら電話してきたのは、図体のデカい千歳クン。(14)
理由は簡単、風邪引いたから。


『だけん、退屈で死にそうなんよ。』
「銀とかは？」
『移したらいかんから、別室で寝とう。』
「じゃあ諦めて一人で寝な。」


切り捨てると、『ひどかー！』とガキっぽく怒る。
熱があると、幼稚化するんかアンタは。


「だいたい、病人が電話したらアカンで。」
『ん…？今どこに居ると？』


風邪っ引きのくせに、いつも通りの観察力。
大方、目の前を横切ったバイクのエンジン音が聞こえてしまったんだろう。

ほんと、めんどくさ…


「要らんお世話。ええから大人しくしててや。」
『え、え？』


何なにと電話口で騒ぐ男はほっぽって、ズカズカ進む。
不用心すぎる門を潜り抜け、右から３番目の網戸に手をかけた。


「あぁ？！」
「声デカいわ、アホ！！」


すばやく口を塞ぎながら、「お待たせ」と呟けば、

「病気しとる男ん部屋に、不用心すぎったい…」

と、嬉しそうに笑った。